n-04 自然素材 住宅に使われる材料(建材)には、木、土、石、草などの自然素材を加工したものから、新建材と呼ばれる石油系の工業製品まで、いろいろなものがあります。自然素材は、材料のバラつきや、施工や加工に手間がかかることなどから、新建材が建材の主流になっていますが、新建材から出る化学物質によって、体調が崩れてしまうシックハウス症候群が問題となり、その対策として、自然素材が再認識されています。 新築やリフォームを切っ掛けとして、体調不良やアレルギーが発症してしまうシックハウス症候群。その原因の多くは、接着剤や新建材に含まれる科学物質(ホルムアルデヒドなど)と言われています。建物の高気密化が進むことで、室内の換気量が少なくなり、使う材料の影響を大きく受けるようになったこともあり、自然素材が注目されていますが、自然素材の中にもアレルギーを誘発させてしまうものが存在するので、注意が必要です。また、新建材に比べて手入れが必要なことや、金額が倍近く違うというものもあり、自然素材が誰にとっても良い材料とは限らないので、長所と短所を分かった上で、上手く使ってください。 木材 木は、数ある建材の中でもっとも汎用性のある材料で、構造材、床材、壁材、天井材など、木材だけでも家一軒が出来てしまいます。木材は内部に適度な水分を含んでおり、室内の湿度変化に合わせて湿気を吸・放湿する性質があります。また、繊維の間の隙間が空間層となって断熱効果もあり、これが触っても冷たくない、ほどよい暖かみを生み出しています。しかし、同じ樹種でも成長した環境で違いが出たりと、材質が均一ではなく、また手入れをしないと腐ったりします。とくに構造材の白蟻の被害は、家の寿命を左右するほど大きなもので、樹種によって、強度や腐食への対応度などを考えながら、それぞれの特徴を活かす使い方が必要です。 左官材 近年、壁の仕上げ材の主流は、左官からビニールクロスに変わりました。以前は壁といったら左官(塗り壁)でしたが、和から洋へと生活が変化し、洋風の家の壁に合う左官材があまり無かったことや、建築費を押さえるために材料費を抑え、また工事期間の短縮が求められた結果、塗壁が避けられました。しかし、珪藻土などの天然の左官材に、調湿性能や脱臭作用があると分かってからは、塗り壁が再認識されています。ビニールクロスに比べて、倍以上の単価ですが、人が集まるリビングや、部屋で過ごすことが多い高齢者の居室などで使われると良いかもしれません。 壁紙 今では改善されましたが、ビニールクロスやその糊から、ホルムアルデヒドが出ることが判明してから、天然素材を原料にした和紙や、無害な紙を貼った上に塗装するルナファーザーなどが注目されています。ただし、ビニールクロスに比べて、汚れや傷がつきやすいことや、不燃性でないことから、使う場所に制限があったりするので、これも適材適所、その個性を理解しながら選択する必要があります。 塗料 塗料は、油、樹脂、溶剤、乾燥剤、そして顔料などを混ぜ合わせてつくられています。樹脂を溶かす役割の溶剤に、ホルムアルデヒドなどが含まれているものが多かったことが発端となり、天然素材を組み合わせた塗料が増えてきました。塗料の役割は、塗る対象物を保護することです。傷や汚れを防ぐために、樹脂を利用して塗膜をつくるものが代表的なものですが、この塗膜は、木などの呼吸する材料の吸、放湿機能を阻害してしまうため、木部などには塗膜をつくらない、浸透性の塗料が使われるようになりました。 断熱材 室内の結露を防止するためや、冷暖房の効果を上げるためにも断熱材は必要なもので、現在では価格の安さから、グラスウールが多く使われています。断熱材は、目に見えない壁や天井内などに施工されるため、軽視されがちでしたが、これもシックハウスの原因の一つとされたことから、見直されされはじめた建材です。現在使われるグラスウールの化学物質は、すでに改善されていて問題ありませんが、廃棄するときなどの環境負荷を軽減する意識などから、古紙からリサイクルされたセルロースファイバーのものや、コルクを使ったものなど、自然素材を利用したものが増えてきています。ただ、これらも倍以上の金額がかかるため、よほど意識の高い方でないと、まだ手が出せないのが実情です。