n-01 家づくりの種類 家づくりの種類 住宅のつくり方に、誰でもに当てはまる絶対の答えというものはありません。自分たちの生活に合うものが一番ですから、それぞれの特徴を把握して、自分たちが求める建て方を選べばいいのですが、家を建てようと思うまで、家のことなど意識しないで生活してきている方が多いのではないでしょうか。 そこで、どんな家づくりが自分たちに合っているのか。契約し進み始めてから気が付いても遅いので、そうならないためにも、どんな建て方があるのか、まずはそこから見比べてください。 ハウスメーカーなどの企画化住宅 ハウスメーカーは企画されたプランが売りですから、モデルハウスやカタログなどで、各社のデザインや性能を比較し、つくるというより買うという、家を商品として捉えた家づくりです。実際の工事は、ハウスメーカーの下請けとなっている、町場の工務店や職人さんが施工していますので、ハウスメーカーというのは、住まい手と施工者の間に一枚噛んでいる、企画営業会社です。 資金計画から登記までの総合的なサービスも、商品の一部となっており、「ゼロから一緒につくる」というよりも、「できているものを買う」ほうが合っている方には向いています。企画されたプランなので、その企画以外の変更には対応できないこと、またモデルハウス、広告、営業マンなどの小さくない経費が、実際に使われる建築材料や職人さんの手間以外に乗っているのも事実なので、建築本体に使われる金額と、実際に建つ家のクオリティには、他の建て方より差があることをお忘れなく。 工務店や建築会社による設計施工 大工さんが一人でやっているところから、営業マンが大勢いるようなところまで、その規模はさまざまですが、設計は内外部の設計者により白紙からスタートし、住まい手の要望に合わせた住宅をつくっていきます。地域に密着しているところであれば、その土地に合うつくり方や、材料の選択なども得意かと思われます。いろいろな工務店や建築会社さんがありますが、それぞれに個性があり、得意不得意、上手下手という技術的な差があったりするのも事実なので、今までに建てた建物の情報収拾が必要です。 そもそもが施工者が主の集団なので、発想や考え方が施工寄りになってしまう傾向があります。どんな住宅が住まい手に合うのかなど、住まい手の視点に立って、プランや材料を選択するといった設計的な見方が弱かったり、設計と施工が同一なために、現場を客観的に監理することの難しさもあるため、どれだけ施主寄りに対応してくれるのかが選択ポイントと思われます。 設計事務所と共に設計から考える 設計事務所は設計と工事現場の設計監理を行い、施工は工務店(建築会社)さんが行います。住まい手の希望を設計にまとめ、相見積りなどで施工者を選択し、現場では建物が図面通りにできているかの設計監理をします。設計と施工が分離しているために、設計と施工の役割や、責任関係が明解になるメリットがありますが、他の家づくりに比べて、まとまった設計料が必要なので、設計にコストをかけられる意識を持った方でないと、敷居が高いかもしれません。 しかし、コストを考えながら設計し、施工者からの見積りをチェックすることで、無駄なお金をチェックし使わないようにすることもできるので、トータルすると、決して設計料が高いものにはならないこともあります。ただ、中には施主さんのための住宅を自分の作品と考え、施主さんの要望をあまり聞かなかったり、図面は描けても、金額と現場のチェックができないという設計者もいるので、自分たちの意見を尊重してくれるのか、また設計監理の実力も判断しないといけません。 オーダーメイドか吊るしの背広か 住宅建築に占める割り合いはハウスメーカーが圧倒的に多い状態ですが、工務店がつくる住宅のほうが落ち着いたり、設計事務所と自分好みの家を一緒に考えたい、といった「つくる派」も徐々に増えてきています。さて、住宅の良さは価格だけではないとわかってきた今、何を基準に選んだらいいのでしょう。 昔の人の生活はいたってシンプルで、住宅のつくり方にもそんなにバリエーションはありませんでした。しかし、工業化、経済成長という新しいものづくりの流れと多様な価値観がうまれた現代の消費社会は、住宅をつくるものから買うものへと変えてしまいました。工務店と設計事務所の家づくりは、昔からの流れのオーダーメイドで、住まい手の希望を聞きながら一軒一軒つくっていきます。しかしハウスメーカーや輸入住宅などは、間取りや使う材料などをあらかじめ限定して生産性を高めることでコストを削減し利益率を高め、できてみないと判らなかった住宅の姿をモデルハウスという目に見える完成品として提示(展示)することで商品化しました。 この違いは「オーダーメイドの背広」と「つるしの背広」に例えられると思います。これはどちらが良いかということではなく、どちらがご自分達の求めるものに合うかということです。金額やプラン、そして工期の問題など、比較するものは沢山ありますが、「生活に住宅を合わす」のか、それとも「住宅に生活を合わせる」のかをよく考えてください。住宅に何を求めるかがキーワードになるはずです。 竣工後の関係 竣工したら住まいづくりは終わりというわけではありません。経年変化によって具合の悪くなる部分がでてきたり、暮らす方々の成長の変化に対応するために、増改築などの必要が生じることもあります。そんな時に、きちんとしたフォローをしてくれるかどうかも、大切なチェックポイントです。 必ずしも有名な会社がしっかりしているとは限りません。担当の営業マンが移動になってしまって連絡しても来てくれないとか、地域に根差している工務店だからといっても反りが合わなくなって連絡できない、ということもあります。建てる前からメンテナンスの善し悪しを判断するのは難しいことですが、会社の規模や金額だけで決めるのではなく、竣工後の信頼関係を築けるところかどうか、ということもじっくり判断しましょう。 自分たちに合った建て方を探しましょう 住宅のつくり方に正解はありませんし、誰にでも合う住宅なんてどこにもありません。大切なのは自分たちに合っている住まいかどうかです。ハウスメーカーにフルオーダーのつくり方を求めるのは無理ですし、設計を重視したいのに、工務店にサービスで設計してもらうのも無理があります。また、和風住宅がいいのに、モダンを得意とする設計事務所に依頼するのも、選択肢として間違いです。 誰とつくるのか、または買うのか、プラン・構造・材料や設備、そして予算などのいろいろな問題を過剰な情報の中から選択していくのは大変な作業ですが、ご自分達が大切にしたいことを整理し、それに優先順位をつけてもう一度身の回りにある情報を見回してみると、印象に残るものが自然に見えてきます。あとは、その絞り込めてきたものをじっくりと検討すればいいのです。 時間をかけていろいろと見ていくと、自分たちが住まいに何を求めているのかが分かってきます。もし分からないことがあれば、どんどん人に聞いてください。できれば、利益に絡まない、プロの客観的な意見を聞けたら一番ですが、知識を詰め込み過ぎるのもかえって混乱のもとですから、お勉強マニアにならないよう、くれぐれも気をつけてください。